はじめに:有機FETの動作は注入と輸送過程に支配されるため、輸送過程(移動度)の制御とともに注入の制御が特性向上には不可欠である。しかし有機デバイスにおける注入過程は複雑であり、注入障壁の効率的な制御は重要な課題となっている。これまで我々は時間分解顕微光第二次高調波発生(TRM-SHG)測定を用いた有機FETの新規評価法を提案し、有機FETのキャリア注入と輸送過程を独立に評価できることを示してきた [1][2]。今回は銀電極トップ型ペンタセンFETキャリア注入特性における空間電荷の寄与について、電気的手法(Transmission Line Model)から検討を行った。
実験結果と考察:寄生抵抗(ソース・ドレイン間のオン抵抗からチャネル部のシート抵抗を差し引いた抵抗値)のペンタセン膜厚依存性を図1に示す。電極からのキャリア注入がショットキー型と考え、注入電荷が作る空間電荷電界を考慮して接触抵抗を求め解析したところ、図の結果が良く説明できることがわかった[3,4]。図中の実線は、その解析結果である。またキャリア注入特性を解析するには定常動作時の電気的測定だけでは十分でなく、TRMSHG測定による注入過程の解析も行った。