集積経済モデルの分析においては,輸送費用などの構造パラメータの変化に伴い,均衡解の複雑な分岐現象が発生する.そのため,安定な均衡解を網羅することは事実上困難である.そこで本研究では,安定な均衡解を合理的・体系的に把握するために,自明解に着目した方法論を提案する.ここで自明解とは,構造パラメータの値の如何に依存することなく空間分布パターンを保持する解である.自明解は,支配方程式の対称性を記述する群の分析により,理論的に特定・分類可能である.本研究では具体的に,境界を与えた有限格子による正方形格子状経済において発現しうる自明解の一般的特性を解明する.また,Forslid and Ottaviano1)の集積経済モデルを用いて,自明解の安定性を分析するとともに,集積形態と安定性の関係を議論する.